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20歯科人生20年の変化 ~ 進化するデジタル技術、しかしデジタルはアナログをつむぐもの ~

虎ノ門デンタルプラクティス(港区神谷町)自由診療 審美歯科 かみ合わせ

Wisely and slow


歯科人生20年と聞くと、私もずいぶん年齢を重ねたなーと実感します。
本当に多くの人に出会い、多くの人から様々な学びを得て、助けられてきたと思います。


私が大学卒業後、初めて研修&勤務したクリニックは東京都板橋区大山にありました。
男性の院長先生は、中央大学を卒業後、社会人3年目で医者になろうと思い立ち、
でも、1年では医学部の試験は間に合わないと感じたそうで、
なら歯学部だ!と決めたそう。見事、1年勉強して大阪大学歯学部へ進学。
その後、東京医科歯科大学大学院を経て開業。
開業後も、大学の非常勤講師として、そして歯科予備校で口腔外科の講師として、常に教育者で臨床家であったと感じます。 
とても頭脳明晰で、厳しくも優しい、(朝食は焼き立てのパンケーキが好き)素晴らしい先生でした。

「常に考えること」「常に練習すること」を教えられ、毎日お昼休みに歯の形成2本、1日の診療後に課題提出をするのが私の日課。 
歯の型取はokが出るまで何度も取り直しさせられ、器具やタービンを持つ時の指のレストもよく注意されました。 
悔しくてつらくて、すべてが嫌になりつつも、熱く指導してくれることが有り難くて、学ぶことが楽しいと思えたのが幸いです。
月に一度、飯田橋である勉強会後の豪華な夕食は、楽しみの一つで、決まって場所は神楽坂でしたね。

当時の総理大臣は小泉純一郎、アメリカのブッシュ大統領に首根っこを掴まれ物言い出来ないと批判されつつも、
エルビス・プレスリー記念館で子供のように嬉しそうにはしゃぐ姿がなんとも滑稽で情けない、でも可愛いと話題になった時代。
同じ時代、歯科界は画期的であったインプラント治療が流行りだした頃。
当時は今のように普段の診療の中で行うほど一般的ではなく、限られた先生しかできない治療だったのです。
院長はインプラントのオペ日を隔週土曜日の午後だけに限定していました。
土曜日の午後は普段ならお休み、でも、インプラント専門医でもあった院長のオペのアシスタントをすることは、
卒業後の無知で好奇心のある私だけの特権であり、その時間が楽しみだったのを思い出します。
シャーカッセン(シャウカステン)にCTフィルムをカチッカチッとはめ込み、オペの準備をするのも私。
普段の診療室はきちっとした外科のオペ室に早替りです。
滅菌済みのガウンとグローブをしたら、絶対手は胸の位置で組む!手をお腹のあたりに下ろしてしまったら、お怒りの声がクリニック内に響きます…
非常に不潔清潔域を徹底した先生でした。昔はCT撮影するのも大学病院で1ヶ月まちということもざらで、一苦労でしたね。

 また記憶にあるのが、院長の愛犬(大型犬)の獣医の歯の話。
「俺の犬の歯科検診に行って来たんだ。その獣医の歯、下の犬歯に銀歯が被せてあったんだよ!
あり得ない、そんな価値観の人に自分の愛犬の歯は託せない!」と怒っていたこと。笑
日本は今も銀歯を入れる人はいるとは思いますが、
その当時でも、見える前歯の犬歯に銀歯を入れる歯医者や希望する患者様はいなかったと思いますが。昭和の時代ですね…笑
 
銀歯とは、日本人の奥歯の保険治療において永らくスタンダードであった金銀パラジウム合金のこと。
耐久性のある安い材料として認知されてきました。
しかし、そのパラジウムや金の金属の価格が異常高騰し、保険で銀歯を入れるとクリニックが赤字となることから、
メタルフリー治療に移行する先生もいらっしゃるようです。皮肉なことです。
なぜなら、スタンダードであった金銀パラジウム=銀歯の組成、パラジウムやニッケル、コバルト、銀などは
一般的にアレルギーを起こしやすいと言われて懸念されてきた材料であります。
身体に悪い影響があると報告され、それでも世界で使用し続けてきたのはだた日本だけ….
これだけ身体に良くないと言われつつも、国はそれをそのままに、多くの歯医者が使うことを止めなかったメタル。
見た目もさることながら、口の中に多くの種類の金属があるとイオン化しやすく、アレルギーが起きやすく、
またガルバニー電流を引き起こしやすいと言われてきました。
ガルバニー電流とは、人体の適正な微弱電流を混乱させ、神経症状を引き起こすとされるものです。
異常なメタルの「価格高騰」の理由から、やっとメタルフリーを推奨し始めている日本。
いよいよ日本人の奥歯から銀歯が消える日が近い?

ここで重要なことは、保険診療の銀歯/メタルに変わる材料は何か。ということ。
【当院は、開業時からメタルフリーを掲げ、身体に馴染む優しい材料のみ使用、
そして患者様おひとりお一人の口腔内に合った材質の選択をしています】


今、国が推奨している保険診療でメタルに代わる白いCAD-CAM冠は「ハイブリットレジン」が材料です。
これは仮歯の材料に近いものなのです。セラミックやジルコニアではありません。
白いのですが、時間と共に変色し、外れやすい、割れやすい材料ではあります。
保険で白い被せ物でラッキー!とはいかないのが、現実です。
そして、最大に問題なのが、精度・真度・色グラデーションに、多くの課題があること。
それでも気にしない。と思う方には白く安くて早い、良いものになるはずです。

この白いCAD-CAM冠、デジタル診療の一つ、口腔内スキャナー(IOS)での型取りで作られます。
ソフトウェアが修復物形態を提案し、そのデータが送られ、ミリング加工されて15分ほどで詰め物や被せ物が仕上がります。
いよいよ歯科医療も、デジタル診療が避けては通れないものになろうとしています。

この光学印象、口腔内スキャナーの利点は、特に患者様の負担を軽減することにあります。
嘔吐反射(オエっとなる)がある方は口の中いっぱいに型取りの材料が流れ込むと、涙を流しながら固まるのを待つという、拷問のような時間を過ごします。
それがこの口腔内スキャナーの型取りとなると、患者様はお口を軽く開けているだけで、全体の型どりがあっという間に終わります。
患者様の不快感軽減と時間短縮は従来のものに比べて非常に優位性があると思います。 
クリニックとしても、型取りの材料や石膏が必要なくなるため、ゴミの削減・コスト削減に繋がります。

しかし、過酷な環境下であるお口の中に入れる被せ物ですから、適合性,耐久性,親和性が良くなければ長持ちしません。
この非常に重要な点が、(精度・真度・適合・配色なども含め)、上記で記載したように、まだまだ課題があります。
型取りも楽で印象材などの材料も要らないことは素晴らしいのですが、
扱う人の技術レベルやスキルに左右されるので、出来上がりの精度が非常にバラバラです、合わない、外れる、割れるが多発します。
光学印象の現在の適するケースは、1歯から3歯で、多数歯ケースとなると従来に劣るとされます。
現在使用している先生でも、デジタルと従来の型取りの両方を行い、技工へ送ります。
あと5年〜くらいで、多数歯でも優れた読み込みをして精度が上がるだろうと言われていますが、
時期やタイミングをみて、当院も導入していく予定です。

本当に20年で世の中は大きく変化しています、
当院はFAXはありません。予約カードもありません、
なぜなら、材料注文はLINEかメッセージ、契約書などは電子マニフェストになり、
予約は患者様ご自身の携帯スマートホンのカレンダーに打ち込んでくださいます。
自ずとペーパーレスに、また、予約カードの出番がなくなったのです。

進化するデジタル診療、ここで忘れてならないのは、
どんなに優れた機器、読み取るデジタル機器があろうとも、結局のところは、
その能力や効果を100%発揮するのは、扱うわれわれ人間だということ。未だ我々のスキルに左右されるのです。 
歯科医療でのデジタルはアナログを紡いでいくものであり、
アナログ作業、アナログ機器を今まで的確に扱い理解してきたからこそ、
デジタルでも応用がきくのだと思うのです。それらを踏まえ、
劇的に変わりゆく中で、そのスピードに乗りながらも、新しいもの全てに左右されないように、
慎重に歯科治療と向き合う必要があります。

おそらく、次の10年、さらに歯科の世界も劇的な進化をするでしょう。
私はどんどん古い人間となりますが、学び貢献できることはまだ多くあります。
未来の自分をどう造るのか、未来の世界とどう付き合っていくのかは、すべて自分次第です。今の自分が未来の自分を作ります。

最大限の努力と歯科治療への情熱で、これからもベストな治療が提供できるように
この先の10年も頑張ろうと思うのです。これからもどうぞ宜しくお願いいたします。

                                      

虎ノ門デンタルプラクティス
長坂ヒロコ

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