「私だけの治療法をください」(中外製薬)
「中外製薬」のコマーシャル、昨年放送されていたものですが、ご覧になったことありますか?
このCMは厳密には遺伝子レベルでの個々人の治療を意図したものですが、
「私だけの治療法をください」のメッセージには、
歯科医として私が提供したい、取り組んでいることの重要なキーワードが含まれています。
現段階での、私のしている歯科医療は、遺伝子レベルの話ではないものの、
『患者さまの個々の特性を知る』ために、治療前の『検査』に重点を置いた、
「あなただけの治療と予防」を提供しています。
歯の治療で私だけの治療??と思うかもしれません。
でも、お口の中、歯も顎も、その動きも、一人ひとりの個性と特徴があります。
治療前の検査とは…頭蓋骨から顎関節まで含めたCT撮影、セファロ撮影、各歯の撮影、
身体軸と咬合の把握のためのかみ合わせ検査、顎の動きを見る顎機能検査などです。
これらの検査により、歯の状態だけでなく、個々の骨格や顎・顎関節を360°様々な位置から細かく分析でき、顎関節の形
(変形している、突起がある、圧迫されてる、すり減っているなど、様々な個々の状態があります)や顎の形、
上顎と下顎の位置関係、口唇の突出度やバランスなどなど、様々な個々の特徴や傾向を把握できます。
今までのような、見えない部分を無視して見える所だけを治療するのではなく、
見える部分が再発なく綺麗が長続きするために重要な、「見えない部分を診査し、必要あれば適切な位置や状態に戻す」
ことこそが、歯の治療にはとっても重要なんです!総合的に個々人の状態を診ていくことにより、
治療は行き当たりばったりではない、その人に合った正しい治療法を選択することができます。
治療を確実なものに近づける、正しい介入をするために、とても重要なことだと考えています。
また、データとして、これらの精密検査・顎機能検査により、個人の違いを知りつつ、共通項も見つけたいのです。
私たちは皆それぞれ別の人間であるからこそ、個人の特徴(骨格・筋肉・歯の性質・色・形)と傾向把握が必要です。
歯肉のバイオタイプ、顎の動き、顎関節の位置・形態等を分析して(ttdp.tokyo/concept/)、
全体を把握することが、適切な治療を提供する大きな基盤になります。
歯や顎関節のCT撮影は、昔のように特別なもではなく、当院のような普通の歯科クリニックで、簡単に撮影することができます。
特殊で見えない部分と無視されていた顎の動きも、顎運動検査機器を使い、直接見ることもできます。
これからは、もう少しだけ、先を見て、「私に合った歯科治療」というものに目を向けていただきたい。
『同じ病気・同じ症状でも、病気の性格や進行状況、治療経過は皆違う。
私たちは皆、それぞれ別の人間。治し方は人の数だけあるべきだと思います』
従来医療から個別化医療へと、時代は進んでいます、歯科医療もデジタル化と再生医療の進展により、
患者様にとって、我々歯科医にとって、社会全体にとって、多大な恩恵を受けていくと確信しています。
個別化医療が普及するには、高額な検査費用や検査の品質・精度確保の基準などを検討する必要があり、
また、倫理的問題、社会整備などの課題がありますが、
さらなる今後の歯科医療にも希望を!ぜひ期待したいです。
また改めて、この話題に触れて見たいと思います。
虎ノ門デンタルプラクティス(TTDP)
長坂ヒロコ
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※ 「Personalized Dentistry」日本発の革新的技術であるiPS細胞と遺伝子診断を活用した、
歯科における再生医療の研究が急速に進められています。
2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞しました山中教授らのiPS細胞(細胞を培養して人工的に作られた多能性幹細胞)
成熟した細胞を多能性を持つ状態に初期化する、
つまり、細胞の時間を巻き戻すような画期的な発見であり、再生医療や創薬研究に役立つことが期待されています。
(中外製薬よくわかるバイオ・ゲノムより)