今年の夏も蒸し暑くやや過酷、皆さまいかがお過ごしですか?
虎ノ門デンタルプラクティスは、あっという間に開業6年が経ち、7年目の夏を迎えました。
日本全国、そして、さまざまな国や背景を持つ患者さまとの出会いに恵まれ、力に変えることのできる多くの経験と、
数字にはできない価値を受け取り、成長してきました。
その成長はまだまだ続きます。
この6年であらゆるものがより流動的に、AIやデジタルにより、医療の基準すら揺れ動いています。
歯科医療においても、実際にこれまでは当然と思われていた人間の判断が信用されにくくなったり、AIが出した答えと違いがあるけど良いの?
と悩む場面があったり…AIに取って代わると言われたりしていますが…
しかし、AI・システム・数値などでは測れないできないことが、まだまだ歯科医療にはあります。
私が見ている未来の歯科医療は、AIを使いこなしながら、もっと本質に向き合う歯科医療です。
当院の画像診断は、CT(KavoOP3D-V17)-顎関節/舌骨/気道、セファロ、口腔内スキャン、パノラマ、デンタルX-ray、顎機能、口腔内写真、顔貌写真と、
患者様のデータは多岐に渡り、その診断ワークフローをAIがサポートしています。
より的確で効果的効率的な診断ができるようにするために、AIの力を借りています。
しかし、患者さんの表情、不安要素、生活背景、希望から最適解を選ぶこと、本当に治すべきタイミング、
装置を交換すべきベストなタイミング、患者さんの癖や頬や舌圧バランス、歯の摩耗の方向やそれが意味するもの、
そして咬合・顎関節という見えない部分の状態と評価など、
これらは、私たち人間がもつ「個々の患者さまの身体の使い方や時間経過を読み解く力」であり、
まだAIが苦手とする分野です。
AIは、情報を分析し、パターンを見つけ、異常を気づかせてくれるツール、傾向や予測を出す、ヒントをくれるサポーターで、
非常に効率的に処理、理想の形態や位置なども提案してくれます。
しかし、歯の見た目の美しさを支えている動的な咬合バランスを、考慮できません。
どう動いているかを見せてくれても、なぜその動きが起きているのか?までは AI は教えてくれないのです。
それを読み取れなければ、また歯医者もそれを診れなければ、結果は想像できますよね?
デジタルだけに頼ることで起こっている安全と精度の低下という大きなトラブルを目にしています。
お口の中は常に湿っていて、筋肉と神経と癖と力が絡み合い、動いていて、変化している過酷な場所です。
だから誰にでも同じ設計ではうまくいきません。
個々の噛む習慣、姿勢、咬合関係、咬合力、呼吸..すべてが治療、修復に影響します。
AIが決してできないことを理解する、どこに人の手作業感覚を残すべきか。
咬合という動的でまだ確信が持てないところ、時に迷いがある部分には、人の感覚を残してほしいです。
人間的で丁寧な選択を、ブレずに続けることが、本質的な歯科治療に向き合う方法で、本当に人を治す、
治療の成功と最良の結果に結びつくと、私は思っています。
誰もが使っても「同じ」になるには、共通の咬合観と設計哲学などが共有されている必要がありますが、
同じ歯科医師、歯科界でも、まだその共通言語が技術より遅れているのです。AIと人、学びは続きます。
虎ノ門デンタルプラクティス
長坂ヒロコ