夫がごくたまに雑誌を買ってくる。何も言わずに渡されるその雑誌の表紙は決まって 『歯』 に関するもの。
「歯と目の大問題」とか 「危ない、目と歯」や 「後悔しない歯科治療」などなど。
歯医者でも医療関係でもない異業種の夫は、意外に歯科医という職業に興味があるのか…
それとも雑誌を読んだ上で皮肉を込めているのか…
私自身はそのような雑誌は買わないし、読むこともないのです。
夫から渡されても、雑誌にきちんと目を通したことがなかった、しかし先日、たまたま読んでみたところ…
ある内容に目が止まった…
雑誌の文章抜粋↓↓
『今や日本人のむし歯は減少、なのに歯を残せない、歯はどんどん抜けるかもしれない…このミステリーの答えとは?』
現在、歯を失う原因はむし歯より歯周病であるというのが現実、定説になりつつある。過去に比べ歯周病が急増中。
むし歯は減って歯は残っているのに、その歯が歯周病にやられて歯を失う。
その最大の敵・歯周病とどう闘うか… 増える歯周病対策の正解、
決め手は『ひたすら丁寧なケア』
ひたすら丁寧なケア?! それだけ?!
えっーー,,,,
惜しい!の一言。ホントですか??
歯周病、歯周病予備軍が多いのは間違いではない、
でも歯周病菌などのプラークコントロールだけ徹底しても、実は歯周病は減らない。
それでは足りないんです。
今の時代、歯周病の増加は、かみ合う力のバランスの乱れ、過度な力と干渉で起こるものが大多数を占める。
歯周病は、歯周組織へのメカニカルストレスが大きく影響している!
細菌/プラークコントロールは大前提であり、プラスして、回避すべき、かみ合わせの問題の存在を診査して対応すれば、真の歯周病対策&予防になる!!
私は、これが正しい回答、対策だと思う。
(かみ合わせの問題は実は昔からあったはず、でもむし歯治療に追われて見逃されてきたのだと思っている。)
残念ながら、雑誌にある「ひたすら丁寧なケア」だけでは、歯周病対策の決め手にもならないし、本当に歯を残すことはできない。
雑誌が意図していることは、本質ではなく、インパクトと利益なのだろう…そう感じてしまう。
多くの読者がこの内容を読み、歯を残すには徹底した歯周病菌のケアで良いんだと鵜呑みにして実行していくとしたら、
今までと何も変わらない、人によってはホントにミステリーになる。恐怖さえ感じたのです。
歯周病は、歯周組織にメカニカルストレス-過剰な力が加わって、
そこに細菌のファクターが加わると、さらに歯周組織の破壊が増長される。
この歯周病の本質を、理解してほしい。
では、 「偏った情報を鵜呑みにせず、本質を見極める目と力をつけるにはどうしたらいいのか。」
・・・実は、これ!という答えは出てこない。。
私たちは、普段、様々な情報や意見に触れながら生活をしていて、
物事には絶対的な正解(本質)はなく、曖昧な正解らしきものがあるにすぎず、
いつのまにか情報に振り回されていることもある。また、興味のないことには、深く理解しようとは思いません。
だから、自分の身や大切な人に、異変や変化が起きないと、残念ながら、良い意味で疑い深く、注意深くならないのが人間のような気がします。
自分の経験から言えることは、「自分に起こる悲劇的な出来事が最も多くのことを教えてくれることになる」ということ。
それは、苦痛から回復するために、自分の知識はより賢明でより強化され、その物事の本質を知ろうという姿勢を持つからだと思います。
その時ほしい情報は、正しい情報であり、本質を知りたいと思うはずです。
でも、そんな経験したくはないですよね..
特に歯の治療では、辛い経験をしてからではなく、そんな経験をしないために本質を見抜いてほしいのです。
だから、私は歯のトラブルや治療の本質をコラムで書くことで、
歯の正しい知識と、正しい方向へと導ける助けになるように、
正しい情報を伝えることを目的としています。
あらゆる情報、雑誌やSNS、テレビや芸術などが意図するものは、
1.利益を得ようとするもの 2. 思惑通りに誘導(誘惑)しようとするもの
この2つが目的となっていることが多く、実にうんざりするような内容や情報も多いのが現実。
今回読んだ雑誌がそうだと言っているわけではありませんが、言っていますね、笑)
歯は一度削ると回復しない硬組織。
歯の治療は時に危険を伴うこともあり、非常に慎重に行う必要があります。
歯はたった数ミクロンで違和感を感じたり、異常をきたすこともあるのですから。
安易な選択をせずに、多くの情報から、本質を見極める必要があると思っています。
むし歯のない時代がいよいよ来るのでしょう。だからこそ、今一度、歯の本質を知り、理解して、本当に歯を守るために何が必要なのか?
やはり土台・基礎となるかみ合わせ、咬合をきちんと診れる歯医者で検診や治療を受けるべきです。
歯の治療は、「機能(かみ合わせ)と審美(美しさ)」の両方が共存して、成功するもの。
歯の予防は、「細菌と力のコントロール」両方ができて、初めて成果を成すもの。
歯を健康に保つには、プラークコントロールだけでなく、かみ合う力(咬合力)のコントロールも必要です!!
わずかでも、歯の本質を知る機会と情報に悩む人々の一助になれば嬉しいです。
※メカニカルストレスとは、細胞や組織が体内で受ける機械的刺激のこと。過度な歯の接触や干渉。
※歯の真の予防には、三位一体予防ケアが大切です。それではまた。
虎ノ門デンタルプラクティス TTDP
長坂ヒロコ